2012年1月24日火曜日

「市場による規制」について

次の質問が届きました。
「アメリカン・デモクラシーの逆説」の58ページに、「政府による規制」よりも「市場による規制」、つまり企業のほうが~ こうした逆説の生じる余地が増幅した。とあります。これは政府の政策や軍事・安全保障、行政が民間企業のロビイストによって支配され、政府は民間企業の意向に沿った政策をしているということなのでしょうか?また、逆説の生じていない状態というのは、政府が民間企業からの圧力を受けていない状態ということですか?この部分がよくわかりません。
次の答えを送りました。
「民間企業の意向に沿った政策」になってしまうというのはそのとおりです。「市場による規制」というのは耳慣れない表現ですが、おそらく市場にまかせれば、物事がアダム・スミスが考えてような「見えざる手」によって良い方向へ導かれるだろう、という発想だと思います。「市場調整機能」という語句はことのことを指していると思います。

58ページで言う「こうした逆説」については、ここで著者がどのような逆説を意図しているかについては今ひとつ自信はありませんが、おそらく公益につながるはずの自由がむしろ公益を損なわれてしまっているということではないかと思います。「逆説の生じていない状態」ということではなく、以前にも増して「逆説が生じやすくなった」ということだと思います。この本でいう「逆説」は「理想」と「現実」との間のギャップを指すことが多いと思います。ここでは市場主義の理想と現実との間に大きな隔たりが生じてしまったていることを「逆説」という言葉で表現していると思います。

実はロビイストについても、「理想」と「現実」との間のギャップがあります。「ロビー活動」の基本というのは一般市民や市民団体の代表などが自分を代表する政治家に要望を伝えたり、問題解決の必要性を訴えたりすることで、民主主義を更に充実させていく良い活動ですが、今ではロビー活動のための予算、また政治献金のための予算が非常に大きい企業の活動があまりにも多くなりすぎたために、一般市民の声が政治家にはあまり届かなくなったという「逆説」が生じていると言えるだろうと思います。

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