2011年1月21日金曜日

自分の意見

昨日から今日にかけていろいろなメールが届いています。個別に返事を書いていますが、ブログですべての質問と答えを紹介する余裕がありません。しかし、次の質問は特に重要だと思いますので、紹介したいと思います。
テストでは論述形式でと書いていたけど、著者が言おうとしていること・著者の主張について自由に自分の考えを規定の字数内に答えるという感じのテストなんですか?
次の返事をメールで送りました。
これは大事な質問です。「自分の考え」を書く余裕があれば是非書いてほしいと思いますが、姜氏の主張等を素通りして、自分の意見だけを書いてしまった場合には、評価できません。講義に関する質問についても同じことが言えます。
姜氏が一番言おうとしていることは何々、という結論だけだったら本と直結する文1つだけ書いて、後は自分の意見や感想というようなと書き方なら評価はかなり低くなります。「姜氏が一番言おうとしていることは***だと」切り出し、その後に姜氏の主張について更にくわしく説明することになります。どのような理由で***がいいと言っているのか?姜氏がいいという***と相容れない見解・立場としてはどのようなものに言及しているか?などのような事柄について詳しく書く必要があります。「一番言おうとしていることは***だ」という結論よりも、その理由や肉付けが重要です。別の言い方をするなら、「この学生が実際に本を読んでいることがよくわかります」というような答案になるようにしてほしいと思います。

皆さんの意見は重要です。皆さんの意見に興味があるからメールでやり取りをしたり、Twitterを使ったり、アンケートをとったりしてきました。しかし、試験では個人的な意見を評価することが難しいです。「本を読んだか」「講義をよく聞いて主旨を理解したか」なら評価できます。「何々に関する講義内容を要約して」というような問題だったら、その内容をきちんと要約した上で、「でも、私の意見はちょっと違っていて、・・・・」というのはりっぱです。しかし、求められている要約などを飛ばして、自分の考えしか書いていないような場合には、「ああ、この人は講義を聞いていなく、講義内容を要約できないので、思いつくことでごまかしている」と判断せざるを得ません。そのようなことにならないようにしてほしいと思います。問題と答案がよく噛み合うようにしてください。

では、明日、頑張ってください。

2011年1月20日木曜日

「美意識」と愛国

次の質問がメールで来ました。
P.23の中西さんに代表される「新・国体」論というのは、日本において美意識を究極の価値とすること(でいいのでしょうか…)と書かれてありますが、この美意識はどういうもの、どういう見方なのでしょうか?
まず、「国体」については「政教分離規定と靖国問題」でちょっと触れましたが、国家神道を中核とする戦前のナショナリズム・愛国の形態を指す言葉です。「新・国体」という言い方は、戦後の新しいナショナリズムや愛国の形態ではありますが、悲惨な戦争につながった戦前・戦時中の発想とどこかで似ているという考えを表現するために姜氏が使っていると思います。

「美意識」については、「美」を意識すること自体はいいけども、「美意識」などは愛国の基盤にはならないというのが姜氏の立場です。この点については133-4ページも多少参考になるかも知れません。本のあちらこちらで「美」とか「情緒」などを愛国の拠点とすることを批判していますので、本を読み進めるうちに「美意識」に対する姜氏に考え方が見えてくるのではないかと思います。

著者の主張とその具体例

今朝、次のメールが届きました。
私もテキストに目を通しましたがなかなか内容が読み込めません。本を読み私なりに作者の主張などをまとめてみると‥
作者は愛国心を考える上で***になるべきではないと考えている。《中略》といったことなどを作者は伝えたいのかなあと思いましたがどうなのでしょうか‥
あと本の内容の実例をあげて作者の主張を答えるテスト形式ですがいまいち本のは内容の実例というのが一体なんなのかが理解できません‥
このメールを高く評価しています。本を読んで理解できたことを書いた上で質問もしてくれました。言葉を"***"に置き換えたり、まとめの大部分を《中略》にしたりしたのは、かなり的を得た要約だと思うからです。ブログでこの的を得たところを褒めると「回答例」になってしまい、本を読まずに、このまとめ方を真似するだけというような答案の書き方を防ぐために、あえて中身を伏せています。

「実例をあげて」というのは、「***になるべきではない」の「***」として何を批判しているのかを具体的に説明することです。結論だけでなく、より具体的に何をどのように批判しているのか、何をどのように勧めているのかを書くことです。本を読んでいなくとも「そういうことだったのか」と理解してもらえるような書き方を求めています。

2011年1月19日水曜日

「テキストを入手できない」問題

「テキストが手に入らない」ということで困っている、という主旨のメールが届いています。9月や10月に講義で繰り返しテキストと試験問題について話しましたが、11月、12月になってからはもう少し入手するように催促すべきだったと反省しています。テキストに関する問題は全体の4割となっていますので、テキスト関連の問題で零点となると成績にかなり響きます。そこで、ぎりぎりになってしまいましたが、今日、救済策を考えました。下記の本は図書館にあるはずですが、どうしてもテキストを入手できなかった場合には、そのうちの一冊を選んで、読んでください。試験では選んだ本に関するエッセーを書いた場合には、本来読むべき本を読んでいないということで多少減点しないといけないと思いますが、おそらく本来の点数の6、7割分を与えられると思います。なお、試験では本の題をはっきりと書いた上で、その中身について具体的に、そしてできるだけ詳しく考察してください。
  1. 民族とネイション : ナショナリズムという難問
    塩川伸明著
    東京 : 岩波書店, 2008.11
    1階文庫・新書
  2. ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る
    梅森直之編著
    東京 : 光文社, 2007.5
    1階一般図書
    311.3/A46
  3. 民族とナショナリズム
    アーネスト・ゲルナー著 ; 加藤節監訳
    東京 : 岩波書店, 2000.12
    1階一般図書
    311.3/G33
  4. 今こそアーレントを読み直す
    仲正昌樹著
    東京 : 講談社, 2009.5
    1階文庫・新書
  5. ナショナリズムとメディア : 日本近代化過程における新聞の功罪
    鈴木健二著
    東京 : 岩波書店, 1997
    1階一般図書 361.45/SU96
上記の本が貸し出し中などの問題があった場合にはメールで連絡してください。図書館にある他の本の提案をメールで送ります。

政教分離規定と靖国問題

下記のメールが届きました。
ここ数日「愛国の作法」を読んでいるのですが思ったように内容が飲みこめず自分の予定では既に読破していたかったのですがまだ途中なのが現状です。。。ピンポイントでここがわからない!というより理解の仕方が私にとっては難しく(私の知識が乏しいが故ですが。。。)正直言うと今まで読んできた分も、筆者の思いがきちんと理解できているのかも自信がありません。
例えば、第二章 3国家と憲法 であげられているような「靖国問題」はp78の最後にある“「この国のかたち」にかかわる極めて重要なテーマ”としてダイレクトにこれが愛国心として心にとめておいて欲しいことの一つだといっているのか、この1冊を通して一つの答えを導くプロセスとしての一つとして理解すればいいのかがわかりません。
まず、具体的な質問に答えてから、この本の難読さについて書きたいと思います。

第二章は「国家とは何か」で、靖国問題に関する考察は「国家の憲法」という節にあります。「国」とは何か、「国家」とは何か、についていろいろな答え方がありますが、法律、つまり憲法で「国」のあり方が規定されているという考え方もあり、ここではそのことについて考察しています。戦前には政教分離がなく、「神道」と「国」が一体となる「国家神道」になっていました。「国」と「宗教」が一緒になってしまったので、国がやろうとする戦争になかなかブレーキがかからなかったという考え方があります。戦前のこの「国体」体制にこのような問題がありましたので、同様な問題を未然に防ぐために、戦後の憲法には政教分離の原理が盛り込まれました。姜氏は、憲法を国が靖国を管理できるように改正(改悪?)しようとする動きを取り上げていますが、このような憲法改正は戦前の体制に逆戻りするようなことになるという立場で注意を喚起しているように思います。また、間接的に、姜氏は「愛国=国家神道的な考え方」と発想の問題点を指摘していると思います。姜氏がこの本を通して、別の形の「愛国」を提案するための考察とも言えると思います。

『愛国の作法』の文体は確かにわかりにくいと思います。それは決していいことではないと思います。しかし、内容はいいと思います。読んでいると「木を見て森を見ず」に陥りやすいと思いますが、その落とし穴を避けるためにはできるだけ本全体の構成を考えながら読み進めるといいと思います。章全体のテーマは何か、それぞれの節のテーマは何か、それが章とどのような関係があるのか、などのように考えながら読んでもらえればいいと思います。

このように質問を送ってくれた学生については「本との格闘をしている」ことがわかりますので、理解しきれないところがあっても、最終的な成績評定の段階でその努力を高く評価できると思います。より多くの受講者からの質問をお待ちしています。

暴力が権利を消し去る

テキストに関する次の質問がメールで来ました。
64ページの『暴力が権利を消し去る』の部分で、権利が、ある一定のバランスを崩すと人々の中には均衡を保つために“暴力”が芽生える、という内容でしたが(この解釈で合っているのか不安ですが)、65ページの8行目「アーレントの言うように・・・」からの一段落の意味がいまいちピンときません。具体的にどういう事なのでしょうか?ヒントだけでもいいので教えてください。
まず、文脈は大事ですが、これは第一章「国家とは何か」の最初の節である「国家と権力」にある文章ですね。「国家と権力」はマックス・ウェーバー(20世紀初頭の社会学者)が国家を正当な暴力を独占する組織として定義したことを出発点にしています。「権力」との関係で姜氏はその暴力の「正当性」に直目しています。64ページの見出しの「暴力が権利を消し去る」で表現しているのは、「暴力」が行き過ぎて、正当性を失われると、「権力」(民主主義国家において、国民の支持を源とする力、つまり「統率力」)が弱くなるということだと思います。「アーレントの言うように」で始まる段落では、アメリカの場合は、ベトナム戦争がそうした暴力の行き過ぎの例になっています。月に人を送ることができたアメリカでも、「地上最小国の一つ(ベトナム)」に負けてしまった訳です。正当化できない暴力だったからだと思います。

「愛国」が行き過ぎると戦争につながる恐れがあるという意味合いで、この「国家」と「暴力」との関係は非常に重要だと思います。戦後、愛国心が好戦的な勢力(いわゆる右翼)の半ば「専売特許」になっていましたが、「そのままにしておけない」(12ページ)というのが姜氏の立場です。この本で、短絡的な戦争肯定論につながらない「愛国」のあり方について考えていると思います。

質問、ありがとうございました。他の受講生の質問を待っています。

2011年1月17日月曜日

学内私書箱

今日、秋学期のパワーポイントのスライドや動画の一部を「学内書箱」に入れました。「学内書箱」は学外からのアクセスはできませんが、学内のパソコンであれば、ファイルの閲覧やダウンロードはできます。

講義での説明を聞いていない人にとって、何を伝えるためのスライドや動画だったかを理解することがたいへん難しいものが多いと思います。また、スライドがパワーポイントのファイルに入っていても、その日に講義で見せる時間がなかったケースもあります。しかし、これらの問題点があっても、学内私書箱に入れてほしいという要望がありましたので、入れてみました。

講義に出席することできた人にとっては復習する上で多少役立つかもしれません。講義に出席できなかった人にとってはわかりにくいところが多くとも、参考になるスライドなどは少しあるかもしれません。

2011年1月12日水曜日

期末試験と『愛国の作法』

期末試験では『愛国の作法』(姜尚中著、朝日新書)に関する論述形式の問題があります。配点は40%となっています。本の主旨(著者が言おうとしていること、著者の主張)を本の内容を例示しながら書けるように準備すれば、この問題でいい点が取れると思います。その準備をする過程で難解な箇所、姜氏の表現がわかりにくいと思われる箇所などが出てくるだろうと思います。意味や意図に関する具体的な疑問が生じた場合には、メールで質問してください。質問してくれた人に対してはメールで返事を書いた上で、他の受講生に対してはブログまたは最終回の講義で質問および私の回答を示します。また、このような質問を積極的に寄せてくれることを高く評価しますので、万が一期末試験で十分に点をとることができなくても、事前に質問を送ってくれていることを考慮して採点します。

メールをお待ちしています。

2011年1月7日金曜日

小川さんへのお礼

今日の小川さんの留学に関する話についてはこういうコメントが届きました。
  • 小川さんから留学の話を聞けて留学にとても興味をもちました。
  • 今日、アメリカに留学している小川さんと画面を通して話を聞き、私はすごいなと思うました。私はどちらかというと外国に行くことに対して消極的な考えで留学や外国で仕事をしている人を尊敬します。やはりいろいろな文化を知ることができ、自分を成長させることができると思うので私も積極的な考えが持てればと思います。
  • 今日の授業はスカイプを使って留学生の話を聞いて、アメリカと日本の違いを実際に体験できている先輩が羨ましく感じました。
小川さん、本当にありがとうございました。

子安宣邦氏と爆笑問題のインタビュー

今日見せた子安宣邦氏と爆笑問題のインタビューについて次のコメントをもらいました。
欧米は歴史上よく国境が変化しているので、日本より「国は人が作った」意識強そうですね。
アメリカについては、日本より「作った」という意識が強いと思いますが、「国境が変化」してきたことについては、日本と欧州は案外似ているように思います。今日準備していたもう一本のビデオはまさにこのことに関する番組です。次回そのビデオを見せて説明したいと思います。

「人種」という概念

先週の講義に対するメール及び私からのコメントです。
  • 受講生から:「今日の授業で戦争のビデオを見て私は想像や聞いていた以上の悲惨さを感じました。人を殺す意識もなくなりただ虫を退治するようになっていたと聞いてとても信じられませんでした。悪気はなくただ使命感だけで行動していた人の気持ちがわかるわけではないが、否定できないところが戦争のすべてなのではないかと思いました。人を殺さなければ自分が殺され、自分の国のために一生懸命はたらいた兵士をせめることはできないと思いました。時代は違えど戦争に対する苦悩や葛藤はとても計り知れないものだと考えました。私たちができることは国単位であの国のはこうだという固定概念を捨てることではないかと思います。」

    マスデン:「私たちができることは国単位であの国のはこうだという固定概念を捨てることではないかと思います。」というのはそのとおりだと思います。

    暗いビデオではありますが、ビデオを通して過去の過ちについて考えることによって、似たような悲劇を回避できればいいと考えて、見せました。その主旨を理解してくれたことはうれしいです。

    ところで、このビデオとその後の人種に関する講義内容との間に密接な関係があると思います。アメリカ側が「人種」という概念を悪用して、人間性を否定するプロパガンダを作りました。人間性の否定は殺戮を可能にすると思います。
  • 受講生から:「人種という概念は、非常にあやふやなものである。私は、黒人が非常に運動能力が優れていると思っていた。しかし、やはり人によっては、運動能力が低い人もいる。だから、黒人だけが優れているとゆう概念を変えようと思った。」

    マスデン:そういうことです。スライドがうまく出てきませんでしたが、集団の差よりも個人差が大きいです。できれば、その点について次回補足したいと思います。

2011年1月6日木曜日

試験は22日(土)

22日に行われる試験について、次の質問を受けました。
試験と合同説明会が被ってしまったんですがどちらを優先するべきでしょうか?
授業への欠席なら私が対応を決めていいことになっていますが、試験となると、残念ながら担当教員の決定自己ではなく、教務課が決めることになります。難しいかと思いますが、是非教務課で聞いてみてください。

なお、当日、自己などで試験を受けられないようなことがあれば、至急教務課に電話してください。当日の問題についても、あくまでも教務課の判断となります。