64ページの『暴力が権利を消し去る』の部分で、権利が、ある一定のバランスを崩すと人々の中には均衡を保つために“暴力”が芽生える、という内容でしたが(この解釈で合っているのか不安ですが)、65ページの8行目「アーレントの言うように・・・」からの一段落の意味がいまいちピンときません。具体的にどういう事なのでしょうか?ヒントだけでもいいので教えてください。まず、文脈は大事ですが、これは第一章「国家とは何か」の最初の節である「国家と権力」にある文章ですね。「国家と権力」はマックス・ウェーバー(20世紀初頭の社会学者)が国家を正当な暴力を独占する組織として定義したことを出発点にしています。「権力」との関係で姜氏はその暴力の「正当性」に直目しています。64ページの見出しの「暴力が権利を消し去る」で表現しているのは、「暴力」が行き過ぎて、正当性を失われると、「権力」(民主主義国家において、国民の支持を源とする力、つまり「統率力」)が弱くなるということだと思います。「アーレントの言うように」で始まる段落では、アメリカの場合は、ベトナム戦争がそうした暴力の行き過ぎの例になっています。月に人を送ることができたアメリカでも、「地上最小国の一つ(ベトナム)」に負けてしまった訳です。正当化できない暴力だったからだと思います。
「愛国」が行き過ぎると戦争につながる恐れがあるという意味合いで、この「国家」と「暴力」との関係は非常に重要だと思います。戦後、愛国心が好戦的な勢力(いわゆる右翼)の半ば「専売特許」になっていましたが、「そのままにしておけない」(12ページ)というのが姜氏の立場です。この本で、短絡的な戦争肯定論につながらない「愛国」のあり方について考えていると思います。
質問、ありがとうございました。他の受講生の質問を待っています。
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